ポストーチ:第4夜、移動中。


彼の地に送らるる手紙の話。



拝啓、ラルシド先生。

いかがお過ごしですか。そちらでは何不自由なく、暮らされていますか。
私もとても元気に暮らしております。

先生がいなくなってから、ある人に連れられてある隊商に入りました。
とても賑やかな隊商で、少し前までは白輝の都に滞在していたのですが
今現在は青タイルの街に移動している最中です。
今まで色んな人の手紙を届けるために色々な街を見てきましたが、
こんな大勢で移動することは初めてなのでとても楽しいです。
隊商のみんなはとてもいい人ばかりで、みんな優しいです。
色んな人に会うたびに、私も頑張らなくちゃなぁって思います。
なので、私は元気です。ご安心ください。先生の手紙も、きっと届けてみせます。

では、乱筆なにとぞお許しください。
なにぶんお導きのほど、お願い申し上げます。

                              ポストーチ




 チリッ


今さっき書き上げたばかりの手紙の端を、焚火の火に近づける。
火に接触した所から、手紙はチリチリと燃えていく。
半分ほど火がついたところで、ようやく手から手紙を離す。
手紙は重力に従い、焚火の中へと落ちていった。焚火の中で紙の屑が燃え踊る。

燃えた屑が煙となり、星の煌く空へ上った。

それを、吸い込まれるように見つめる。
手紙にこめた想いと共に、
届くように届くようにと。


焚火の火が燃やすものがなくなり、小さくなりかけたところで、
ようやく地上へと目線を戻した。

「……よし、行こう」

砂漠の砂を焚火へ荒っぽくかけ、火を消すと
小さな掛け声を自分にかけて隊商の移動の天幕が立ち並ぶ場所へと戻っていった。






なんか妙に暗い雰囲気の話。
故人に宛てる手紙。
届くはずはないかもしれないけど、届くといいな。