サンは廃虚のような教会の扉に見つめた。 「…子供には優しいハズ、だよな。 凍死よかマシかな…、炎症は治すのがめんどうだ。」 白い息と共にグチのような考えを吐き出す。 今夜は特に厳しい吹雪のようだ。冷たさを感じるハズの無い頬がなんだか痛む。 「コホっ、コホ…おじゃま、します…」 ゆっくりと扉を開ける。弱々しい子供を演じながら。 「……? だれか…いませんか…?」 建物の中は恐ろしく静かで、雪が吹き込んでいた。どうやら天窓が壊れているようだ。 イスにシスターが座っているようだが、サンの呼び掛けには反応しなかった。 とりあえず扉を閉め、奥へと彼女の方へと歩く。 雪はさくさくと音をたて、大分降り積もっているようだった。一面まっしろで外も屋内も温度はあまり変わらないだろう、と吐く息の白さでサンは判断した。 「あの、すみません…」 ぽんっとシスターの肩に手を置く。するとぐらりと彼女の身体は横に倒れてしまった。 「…凍死…している」 倒れた彼女の身体は座っているままの体勢で横になっていた。 「いや、死んだのが先かな…その後凍ったか…」 彼女を覗き込むと頬は痩せ細り、手は骨と皮しか無いようだった。 死して尚祈りを捧げる形で手を組んだ彼女にサンは素晴らしい信仰心ですこと、ともらす。 ふと気付いたようにシスターに向いていた顔を上げると、あたりを見渡した。 庭園へと続く扉を見つけると少し開けて覗いた。いくつもの十字架が雪を積もらせて立っていた。 「…彼女は最後の独りか」 扉を閉め、シスターをちらりと見た。 シスターはイスに不自然に倒れている。ほんの少しの間で少し雪がつもっていた。 「…独りは、寂しいですか?」 少年が去った後には十字架が一つ増えていた。 「責任を感じて無いワケじゃないんだ。 でもなんで僕が感じなくちゃいけないのって気もするけど。」 サンは白い息と共にグチのような考えを吐き出した。 暗い天を仰いだ。 白い星と雪が際立つ。 「…宿が無いのは辛いなーあ… ・・・・・。 やっぱりあんな所でもいいから雪をちょっとでも凌ぐべきかも…」 しばらくしてやっぱり振り返る。 ドン! 何かにぶつかり、視界が揺らぐがなんとか持ちこたえる。 目の前には女性がしりもちをついていた。 救済の場はないという 前の[雪の中]に続く。 [雪の中]の補足的小話。 |