そこには不思議な金の瞳があった。


「どろぼうさん?」
「この歳で犯罪者にはなりたくないなあ。」
「じゃあ、さつじんきさん?」
「犯罪レベル悪化してるよ、それ。」


短い金の髪が風になびいた。








ここの所の日課は、お手伝いさんが寝ちゃったあと窓から屋根に出て外を眺める事。

いつもの手慣れたように窓の鍵を外す。

 かたん

窓を一気に開け放つとひゅうっと寒い空気が走った。
息も一気に白くなる。
別にギャグではない。

「よいっしょ。」

慣れてきたがやはり窓から外に出るのは緊張する。
外の世界へのワクワクと、ばれないかのハラハラ。
でも外に出てしまうとそんなものは寒い空気と一緒に暗闇へと消える。

「はぁ…」

感嘆。
私だけの真夜中の街。
人気なく、街灯が照る。
白い雪が降り、踊る。
私の人生の至福の時である。

 どすん
 どささささ

何かが落ちる音と雪が屋根から落ちる音がした。
静寂に鳴り響く。
私だけの街から目を戻すと、
そこには不思議な金の瞳があった。

「…どろぼうさん?」
「この歳で犯罪者にはなりたくないなあ。」
「じゃあ、さつじんきさん?」
「犯罪レベル悪化してるよ、それ。」

短い金の髪が風になびいた。
私と同じくらいの歳の少年は頭やら肩やらについた雪をはらいながら言った。
まっしろとまっくろのなかに彼だけが浮かび上がる金色。
すごくしんぴてきというより、すごくふしぎだ。

「じゃあ、ふしぎさん?」
「まあ、一番それが近いかな。」

そういうとふしぎさんは一度自分の服の中、マフラーの中を覗き込んだ。そして視線を私に戻す。

「君は?」
「…じゃあ私は、かわいそうな少女A。」

金色の瞳が一瞬まるく驚いた。
一瞬だけ。次にはもうもどっていた。

「こんな時間にこんな屋根で何してるの?」
「それは私もきみに聞きたい。」
「・・・君は、この家の子?」
「そうよ。」
「そう。じゃあ、迷惑かけたね。もう行くよ。」

たいして申し訳なくないように彼はおじぎするとうしろを向いた。
金色の瞳が隠れる。
ふしぎさんは不安定な屋根の上をよたよたと歩き始めた。
歩くごとに雪がさくさくとなり、たまに落ちる。
このままでは、行ってしまう。

「待って。」

金色の瞳がまたこちらに向いた。

「すこし、お話しない?」








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